本年9月に実施した当組合の景気動向に関するアンケート結果を見ると、景況感においては、「比較的好調」と「底が見えた」を合せた数値が、前々回から70.2%、64.8%、57.1%と下落し、「益々悪くなっている」、「底が見えない」を合わせて、前々回の28.6%から29.6%、41.1%と年々増加しており、景況感が徐々に悪化の傾向に推移している。
その判断材料となるべき、収支状況は前回に比べて赤字基調と回答した企業の割合が大幅に増加し、売上高及び利益率については、引続き減少と回答した企業の割合が益々大きくなり、前回の景況感の悪化が兆しから悪化の兆候が鮮明になる結果となった。
<回収状況>
今回のアンケート回収は、97社の送付に対して、回答企業56社、回答率57.7%だった。前回の回答率が63.4%だったのに比べて、5.7ポイント低下している。
平均従業員数は36.8人、平均年齢は44.5歳で、前回は40.0人、42.7歳だったのに比べ、1社あたりの従業員数は減少し、平均年齢は1.8歳年を重ねる結果となった。
図?1は、主要品目類型別企業数を見たものだ。1位は、「ニット・カジュアル」(13社)で、6年連続で1位となっている。2位は、「婦人外衣系」(8社)、3位は「婦人ボトム系」(7社)、だった。
以下は、「ジーンズ」(6社)、「ユニフォーム・ワーキング」(6社)などだった。
前回1から5位に大きな変動は無く、引続き主要品目に変化が無い結果となった。
図?2は、従業員規模別企業数を見たものだ。「20人未満」が32社となっており、引続き回答企業の過半を占めた。それに次いで「20?50人未満」が14社、「50?100人未満」が7社となっており、前回と大きな変化は無かった。
図?3は、平均年齢別企業数を見たものだ。突出して高い比率を占めているのが「40?49歳」の29社で、前回の36社から減少し、「30?39歳」も17社から9社と大幅に減少しており、従業員の平均年齢が上がっている背景となっているといえそうである。
景気概況
〈収支状況・景況感>
図?4は、収支状況を聞いたものだ。図に見るとおり、「黒字基調」12.5%、「収支トントン」41.1%、「赤字基調」35.7%、「無回答」10.7%となっている。図がビジュアルに示すように「収支トントン」のシェアが減少し、「赤字基調」が増加となっており、収支状況は益々悪化の傾向にあるようだ。
図?5は、景況感を聞いたものだ。「比較的好調」(21.4%)、「底が見えた」(35.7%)、「底が見えない」(21.4%)となっている。この中で前回より比率が大きく低下したのが「比較的好調」で、前回のシェアが33.8%から21.4%と12.4ポイント減少し、「益々悪くなっている」と「底が見えない」を合わせた比率が、29.6%から41.1%と11.5ポイント増加しており、収支状況を踏まえると、景況感は悪化の傾向にあるようだ。
<売上高・利益率>
図?6は、売上高を見たものだが、「減少」が前回の33.8%から50.0%と16.2ポイントの大幅な増となっている一方で、「増加」が、22.5%から8.9%と13.6ポイントの減少となるなど、前回に比べて売上高は減少傾向にあることが示される結果となった。
図?7は、売上高の増減率を見たものだ。この中で「増加」の中身は、「10%以上増加」が前回の5.6%から1.8%、1社に留まっている。「1?10%未満増加」は前回の15.5%から3.6%と11.9ポンイトの減少(2社)となっている。
一方、「減少」を見ると、「1?10%未満減少」が前回の8.5%から10.7%なっている中で、「10%以上減少」は前回の18.3%から26.8%に大幅に増加しており、全体として、売上高は減少傾向にあるようだ。
図?8は、利益率を見たものだ。「増加」は前回の16.9%から5.4%に大幅減少し、「減少」が、33.8%から53.5%に大きく増加しており、売上高の減少に併せて利益率も減少傾向にあることが読み取れる結果となった。
図?9は、前項の利益率を増減率で見たものだ。ここでも注目されるのは、「10%以上増加」「1?10%未満の増加」を合わせた「増加」が前回の16.9%から3.6%に大幅に減少する中で、「1?10%未満減少」が、前回の7.0%から19.6%に大きく増加しており、前回の企業利益の二極化から全体的に利益率の悪化が進んでいる状況が読み取れる。
<加工賃>
図?10は、加工賃について聞いたものだ。「同じ」は一貫して大半を占めており、ここ3年間の推移を見ると、前々回67.5%、前回69.0%、今回69.6%となっている。中心であることに変わりはないが、前回に比べ、「増加」が9.9%から16.1%と6.2ポイントの増加となる中で、「減少」も19.7%から12.5%と7.2ポイント減少しており、人件費をはじめとする多くのコストが増大する中で、加工賃に対するアパレルとの交渉の成果が見える一方で、未だ「減少」と値上げを享受出来ない実態もあり、引続き企業の二極化が進んでいる結果となった。
図?11は、その増減率を見たものだ。「増減なし」が前回の69.0%から69.6%と変化が無い中で、「10%以上減少」「1?10%未満の減少」を合わせた「減少」が前回の15.5%から1.8%と大幅に減少しており、引続き厳しい受注環境であるものの、下げ止まりにある事が読み取れる結果となった。
企業の対応
<主要取引先の変化・生産品目の増減>
図?12は、主要取引先の変化を聞いたものだ。「変化なし」が圧倒的なシェアを占める中で、今回も前回同様大きな変化は無かった。
図?13は、取引先の増減を見たものだ。ここでも「同じ」は圧倒的なシェアを占めているものの、「増加」が前々回の15.6%、14.1%、19.6%と引続き拡大傾向にあり、新たな取引先の確保に向けた取組みの成果が伺える。
<生産品目の転換・生産品目の増減>
図?14は、生産品目の転換を聞いたものだが、「転換」が前々回の6.5%、5.6%、3.6%と若干増加しているものの、「変化なし」が前々回の93.5%から94.4%、91.1%と5年連続で90%を超え、圧倒的なシェアを占めているおり、「転換」に向けた取組みも落ち着いたようだ。
図?15は、生産品目の増減を聞いたものだ。ここでも「同じ」は圧倒的なシェアを占めている。ただ「増加」が前々回の18.2%、22.5%、17.9%と増加しており、引続き拡大傾向にあることが読み取れる。
<新規設備投資>
図?16は、新規の設備投資について聞いたものだ。図で見るとおり、「投資なし」が圧倒的ではあるものの、設備投資を実施しているとの前向きの回答が、前々回から23.4%、35.2%、19.6%と継続的に増えており、設備投資への意欲に衰えは無く、今後に期待が持てる結果となった。
<海外生産・輸出>
図?17は、海外生産について聞いたものだが、海外生産を行っていないという回答が圧倒的であり、前々回の83.1%、88.8%、91.0%と比率は増加しているものの、企業数に大きな変化は無く、横ばい傾向となっている。
図?18は、輸出の有無について聞いたもので、「なし」は一貫して圧倒的なシェアを占めている。「有り」の企業の推移を見ると、前々回7社、前回5社、今回6社と上下しているものの輸出への取組みに大きな変化は無いようだ。
<おわりに>
今回のアンケート結果は、前回の調査と比較して、収支状況と景況感に悪化の兆候が鮮明となり、生産コストが上昇する中で、売上げの減少、加工賃の引下げ、利益率の低下に苦しんでいる組合員が大幅に増加している状況が示される結果となった。
大手企業の業績が回復し、日経平均株価が21年ぶりの高値を記録し、高層マンションや高額な金融商品等の販売が好調な中で、縫製業界の多くの企業が、その恩恵に浴すること無く、最低賃金の大幅な上昇を工賃に上乗せすることもままならず、厳しい経営に直面している。
当組合では、経済産業省製造産業局生活製品課の指導により、縫製業界における取引ガイドラインの作成に向けて、繊維産業流通構造改革推進協議会及び関係団体との協議を重ねており、この取組みによって、国内の縫製業界が適正な利益を得て将来に希望の持てる産業へと活性化されることを期待したい。